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5打差で圧勝 世界1位S・シェフラーの強さを支えるもの【舩越園子コラム】
そのプレー姿はまさに“戦士”。シェフラーの強さの根底に流れるものとは?(撮影:GettyImages)

ゴルフ界の「キング」アーノルド・パーマーのお膝元、米フロリダ州のベイヒルで開催されたアーノルド・パーマー招待は、日本のエース、松山英樹の出場2試合連続優勝が期待されていた。


松山が優勝すれば、通算10勝目となり、「帝王ジャック・ニクラスの大会」メモリアル・トーナメント(2014年)、「王者タイガー・ウッズの大会」ジェネシス招待(2024年)に続くレジェンド大会制覇が達成された。さらには、ジェネシス招待に続くシグネチャー・イベント2連勝で、破格の優勝賞金400万ドル(約6億円)を2試合連続で獲得する「12億円の荒稼ぎ」も世界に披露されるところだった。

しかし「首位から2打差で最終日を迎えられるのは良かった」と語っていた松山のサンデー・アフタヌーンは、逆にその差を大きく広げられて終わる悔しい結果になった。
8番でボギーを先行させた松山は、この日、スコアを4つ落として「76」を喫し、首位から12打差の12位タイに甘んじた。だが、最終日に苦戦を強いられたのは松山だけではなかった。上位陣の大半が難コースの超難セッティングにてこずり、スコアを伸ばせず四苦八苦していた。

そんな中、ただ1人、スコアを6つも伸ばして見事、勝利したのは、世界ランキング1位のスコッティ・シェフラーだった。

最終日を通算9アンダー、首位タイで迎えたシェフラーは、6バーディー・ボギーなしのパーフェクトな戦いぶりで、2位に5打差をつけて圧勝。2022年に続く大会2勝目と通算7勝目を達成したシェフラーの姿には、世界ナンバー1の貫禄が溢れ返っていた。

「今日はグッドスタートを切ることができた。バックナインに入ったとき、2位との差は2~3打差だと思い、もっとビッグなリードが必要だと思いながら18番まで来た」

実際は、折り返し直後に2連続バーディを奪った時点で4打差をつけ、最後は5打差で勝利。独走態勢による圧巻の勝利だった。

今週は、いや「今週も」、シェフラーはパットが冴えていた。とりわけ3日目は上がり7ホールすべてを1パットでカップに沈め、54ホール目でリーダーボードの最上段を捉えた。そして最終日は首位の座を独り占めしたまま、72ホール目を終えてガッツポーズを取った。

かつては「グリーン上が弱点」と指摘されていたシェフラーだが、昨年からパット専門コーチ、フィル・ケニョンの指導を受け始め、弱点を強みに変えた。シェフラー自身、パットの上達を感じ取り、昨年12月には、ヒーロー・ワールド・チャレンジを「パターで制した」ことを、とても喜んでいた。

しかし、せっかく得た自信も、ときにプレーを阻害することもあるそうで、今週のベイヒルでは、自信が過剰にならないよう、プレーの邪魔をしないよう、自分自身のメンタル面の戦いに挑んでいたという。

「今週は、いかにマインドを静かに保つことができるかを課題にしていた。パットをミスしたとき、パットが上達しているはずの自分がこんなくだらないミスをするはずがないと思いがちだ。でも、そう思うことが心を乱し、ゴルフを乱す。だから今週は、気負いすぎないよう心を静かにキープしようと努めた。そのおかげで、いいパットがたくさんできた」

来週の「第5のメジャー」プレーヤーズ選手権をディフェンディング・チャンピオンとして迎えるシェフラーは、今、絶好調ゆえに、すでに優勝候補の筆頭に上がっている。2022年はマスターズを含む4勝を挙げ、2023年は年間2勝、そして今週、2024年の1勝目を挙げ、来週はさらなる勝利を目指すことになる。

だが、シェフラーは「もちろん勝利を目指して戦うけど、優勝することと僕自身のアイデンティティは別ものだ」と、きっぱり言い切る。

自分の枕詞は「世界ナンバー1のシェフラー」「通算7勝のシェフラー」ではなく、「戦士シェフラー」であってほしいと彼は言う。そして「ゴルフが人生のすべてではない」「愛する妻がいる人生こそが最高だ」と感じているシェフラーは、だからこそ強く、だからこそ世界ナンバー1であり続けているのではないだろうか。

文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)


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