世界最古であり、最も国際的なメジャーの全英オープンでは、過去150年以上にわたり、世界トップクラスのゴルファーたちが困難なリンクスコースに挑み続けてきた。
1860年10月17日。プレストウィックゴルフクラブにプロゴルファー8人が 集結し、チャンピオン・ゴルファーが誰かを決定する大会が行われた。
勝者には王者の証であるモロッコ製の赤い皮でできたチャレンジ・ベルトが渡された。ちなみにこのベルトは当時の価値で25ポンド程度と言われている。大会は、12ホールを3ラウンド行う形式で開催され、記念すべき第一回大会を制したのは、オールド・トム・モリスに2打差をつけたウィリー・パーク・シニアだった。そしてその一年後、プレストウィックGCは、同大会が世界規模で出場者を募ることを発表したのである。
クラレット・ジャグ、正式名称はザ・ゴルフ・チャンピオン・トロフィーとは、全英オープン選手権覇者に毎年贈られるトロフィーである。しかし元々はトロフィーが渡されたわけではなかった。1860年に開催されたプレストウィックGCの際、勝者にはチャレンジベルトが手渡された。ベルトはモロッコ産の革製で、銀製のバックルとエンブレムで装飾されたものだった。1860年、こうして歴史が始まった。
全英オープンが始まってから10年後の1870年大会でトム・モリス・ジュニアが3連覇に成功、チャレンジベルトを獲得した。翌年の4月、プレストウィックGCの春の会議にて今後の選手権の方向性について話し合いが行われた。中心となった議題の中にはギルバート・ミッチェル・インズが提案した以下の内容もあった。
「セントアンドリュースやマッセルバラ、さらにほかのクラブも4ホール以上プレーする形式の大会に参戦し、ベルトを競い合う話が出ています。しかしながら、プレストウィックGCのみで大会が開催されるのにベルトの提供をするというのは、いかがなものだろうか」
この議題は可決されたものの、大会開催会場やどのようにして他クラブが参加するかなどの最終的な結論は出ず、最終的に1871年大会は不開催となった。しかし翌年になると大会が再開された。同年5月1日にR&Aの議事録には次のように記してある。グリーン・コミッティー(大会運営委員会)に、
「チャンピオンシップベルトの再開に関して他クラブと話し合いをする権限、およびこれに関して15ポンドまでの予算も割り当てられる」
1872年9月11日。プレストウィックGC、ジ・オナラブル・カンパニー・オブ・エジンバラ・ゴルファーズ、ロイヤル&アンシェントGCが、3クラブ間で全英オープン選手権を開催することに同意した。さらにその際には、大会優勝者にメダルと、3クラブが10ポンドずつ寄付し合って作る銀のクラレット・ジャグが贈呈されることが決定した。こうしてチャンピオンベルトは廃止され、ザ・ゴルフ・チャンピオン・トロフィーが生み出されたのだった。だが大会までに製作ができずに、同年に4連覇を達成したトム・モリス・ジュニアには「ザ・ゴルフ・チャンピオン・トロフィー」と刻印されたメダルが送られた。
「ゴルフ界で最もクールなトロフィーだ!」 2017年大会優勝のジョーダン・スピース
チャンピオン・ゴルファー・オブ・ジ・イヤーがクラレット・ジャグを使って勝利の美酒を味わうのは、伝統的な習わしだ。
チャレンジベルト提供のアイデアは中世の演劇を好んだエグリントン伯爵に起因する。社交の場として、様々なスポーツの舞台を積極的に推奨した同伯爵は全英オープン選手権開催の立役者の一人としても知られる。また、ジ・アーバイン・アーチャーズ選手権などを含む多くの大会では、ゴールド・ベルトなどのベルトやトロフィーも提供した。チャレンジベルトのオリジナルは、プレストウィックGCのメンバーにより購入された。
新しい大会の規則によると、以下のように記されている:
“「大会優勝者はベルトをクラブの会計担当に引き渡し、翌年大会まで同担当者の管理下のもとで、安全に保管されることを認める。ただし3連覇を達成したゴルファーには、ベルトの所有を認める」
優勝者が初めてメダルを授与したのは、トロフィーがなかった1872年のこと。翌年王者のために、毎年返納されなくてはならないクラレット・ジャグとは異なり、ゴールド・メダルは王者が保持することが許されている。当時のゴールド・メダルは銀メッキで作られていた。形は楕円形で、中央部には、盾にゴルフクラブがクロスされたデザインが中央に施されていた。周りには「ゴルフ・チャンピオン・トロフィー」の刻印がされていた。その後1880年後半から1890年前半にかけて数回デザインが変更されている。
正円のメダルが最初に出てきたのは1893年で、以来、大きさや形に大きな変化は出ていない。また同年にはメダルの価値を10ポンドと定め、優勝者に手渡される賞金から相当額を減額されることも決定している。1920年になるとその価値は25ポンドへと上昇し、同時に優勝賞金から減額されるも同額に変わった。ただこれは1930年以降に取りやめられて、優勝者がメダルを“購入する”習わしはなくなったのである。
1922年ごろには最優秀アマチュアも評価・認識することも提案されたが、1949年までゴールド・メダルと同じサイズでデザインのメダルのシルバー・メダルが贈呈されることはなかった。刻印される「ゴルフ・チャンピオン・トロフィー」は同様だったものの、アマチュアには「最優秀アマチュア」の文字が付け加えられた。初代授与者は米国のフランク・ストラナハンで、ストラナハンはその後1950~51年、1953年大会でも優勝しメダルを授与している。
1972年大会からは、最終ラウンドまでプレーした全アマチュア選手(優勝者を除く)にブロンズ・メダルが贈呈されている。
様々な環境問題に直面している現代社会。それだけに全英オープン選手権も、大会の会場となるリンクスコースの自然なランドスケープを崩さずに維持できるよう、最善の努力をしています。大会を運営するうえで、自然の特別な“感受性”や野生生物を保護するように、各ステージで最大限の配慮がなされています。将来的にもリンクスコースが変わらぬ姿のままでいられるように、生態学者、そして開催会場の関係者と協議を重ねて、運営を続けています。
また「ザ・グリーンリンクス・プログラム」では、スポーツイベントの開催におけるサステナビリティをより幅広いの中で考え、向かい合っています。選手権が行われる一週間で数万人の観客が大会を訪れますが、全英オープンにはサスティナブル・プロキュアメント・ポリシーを取り入れ、来訪者にサービス提供をする飲食部門では、地元で倫理的に作られた飲食物を中心的に取りそろえたサプライヤーを積極的に採用するように努めました。さらに、ゴミや廃棄物は、埋め立てが最小限になるような材質を使っており、ゴミの分別やリサイクルも賛同企業とともに率先して行っています。
グリーンリンクスを支援する
グリーンリンクス・プログラムを支援するには、大会開催中に次を行ってください。
全英オープンでは、地産地消を心がけ、開催会場の地域にあるビジネスの支援を積極的に行っています。可能な限り地元原産のヘルシーな食材を採用して、サステナブルなイベントを開催するのが目標です。
観戦に訪れたギャラリーが自然のランドスケープを破壊することのないように、全英オープンでは、リサイクル可能なゴミと一般ゴミの分別を徹底する詳細な計画を立てて実行します。会場を訪れたギャラリーは、ポイ捨ては決してせずに、リサイクル用のゴミ箱を使用するように心がけてください。
全英オープンでは、過去な何年にもわたりフェアトレードの認証を受けた紅茶、コーヒー、ホットチョコレート、砂糖、バナナが提供されてきました。フェアトレードへのコミットメントは、その提供者である発展途上国の農家やその被雇用者がフェアトレード・ミニマム・プライス(フェアトレード上の最低限の料金)を授受して、収穫物の採算が取れるようにしています。加えて、フェアトレード・プレミアムと呼ばれる手当も授受することで、ビジネスやコミュニティーのプロジェクトへ投資還元できるシステムが構築されています。倫理的な食材生産の支援は、サステナブルなイベントを開催する全英オープンにとって極めて重要な事項のため、今後も継続して行っていきます。
全英オープンのサスティナブルプログラム、グリーンリンクスはGEOファンデーションの監修のもとに実践されています。GEOは、アクセスしやすく信頼を置けるサステナビリティの標準となるメカニズムをゴルフ界に提供しています。またゴルフと環境における様々な特殊プログラムのサポートや承認、キャパシティビルディング・アクティビティーなども行っています。
全英オープンはリンクスゴルフの極限への挑戦です。硬くてタフな地面は高いスキルを称賛する一方、失敗は厳しく罰せられます。スポーツ・ターフ・リサーチ・インスティテュート(STRI)は“本物のリンクス”を仕上げるために、毎年、そして各開催コースにおいて全英オープンと協力しています。最高の硬さと滑らかさ、真正さと速さ、さらにサステナブルなグリーンキーピングを実践し、世界のトップゴルファーがプレーするための最上のコースでプレーできるためにシンプルで明確な試験用プログラムを準備しています。
様々な環境問題に直面している現代社会。それだけに全英オープン選手権も、大会の会場となるリンクスコースの自然なランドスケープを崩さずに維持できるよう、最善の努力をしています。大会を運営するうえで、自然の特別な“感受性”や野生生物を保護するように、各ステージで最大限の配慮がなされています。将来的にもリンクスコースが変わらぬ姿のままでいられるように、生態学者、そして開催会場の関係者と協議を重ねて、運営を続けています。全英オープンの開催会場は、英国内でも最も貴重な野生生物の生息地域としても知られている場所もあります。またリンクスのランドスケープには、例えばヒバリのような絶滅が危惧される生物が生息していることもあります。このような貴重なランドスケープを保護するために最善の努力をし続けることは、より環境にやさしいサステナブルなイベントを開催していくうえでの、全英オープンのコミットメントであります。