<全英オープン 最終日◇17日◇セント・アンドリュース オールドコース(スコットランド)◇7313ヤード・パー72>
ローリー・マキロイ(北アイルランド)にとっては、バックナインの途中まではすべてが順調に進んでいた。最低でも、傍観者として最終日のプレーを見守っていたゴルフファンは、そう思っていたのではないだろうか。
今週のマキロイは「守るときは守り、攻めるときは攻める」を貫いてきた。これは、リンクスコースを戦う上では非常に大切なことであり、リンクスゴルフを熟知しているからこそ、こういったゲームプランを立てていたのである。
そして2014年大会王者の作戦は、最終日のハーフターンまでは最良の形で働いていた。だが一つだけ大きな誤算があった。最終的に逆転優勝を遂げた、マキロイの一組前でプレーしていたキャメロン・スミス(オーストラリア)が“ゾーン”に入り、バックナインで圧巻のパフォーマンスでバーディラッシュを仕掛けたことだった。すべての歯車が崩れていったのである。
「間違ったことをした感じではなかった」と振り返り、ただその一方で「でも正しいことができたわけでもなかった」と付け加えた。
この言葉の意味は容易に理解できる。過去の3ラウンドでは難しいホールでは無理をせず、忍耐強く我慢しながら勝負所でバーディを獲ってスコアを伸ばした。だからこそ、3日目終了時点で16アンダーという好スコアを叩き出していたのである。 しかしこの日は、それができなかった。
「ゲームはコントロールできていたと思うが、9番、12番、14番といった比較的イージーなホールでバーディを獲れなかったんだ。そんな日もある」
その言葉どおり最大の勝負の分かれ目は14番、614ヤードのパー5だった。このホールでスミスが寄せワンでしっかりとバーディを奪取したのに対し、マキロイはアプローチを寄せきれなかった。この6メートルを外してパー。ここで完全に流れを失った。
「これらのホールでしっかりバーディを獲れていたら、状況は大きく変わっていただろうね」とサバサバとした口調ながら、悔しさをにじませた。
2014年以来となる2度目のクラレットジャグまで、すぐ目前まで来ていた。しかしながら、世界最古のメジャーのトロフィーはマキロイの手をスルりと通り抜けていった。
「もちろん悔しい」と話したうえで、勝ったスミスのパフォーマンスを称えた。
「でも私より素晴らしいゴルフをしていた相手に負けただけ。このコースで、4日間で20アンダーはハンパじゃない。特に今日、このタイミングで『64』を出したのは凄いことだ」
無論、33歳のキャリアはこれで終るわけではない。むしろ、今シーズンのパフォーマンスは、自身のキャリアを通じてもトップクラスと言えるだろう。
「パットをミスしたのは残念だけど、トータルで見れば良い一週間だった。今シーズンここまで好調で、この先も良い形で進みそうだ。自分のゴルフキャリアを通じてベストなゴルフが久々にできている。だからあとはドアを叩き続けるだけのこと。そうすればいつかそのドアは開くだろうからね」
もしかしたら、そのドアには“ロイヤル・リバプール”と書いてあるかもしれない。そう、来年2023年大会の会場は、前回マキロイが悲願の全英オープン初制覇を遂げた思い出のゴルフコースである。
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