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9年越しの初優勝に「ありがとう、そしてありがとう!」 アジアの賞金王がクラブ11本で逃げ切りV
ついに初優勝を挙げたパグンサン “シルバーコレクター”の称号ともおさらばだ|(撮影:ALBA)

<〜全英への道〜ミズノオープン 最終日◇30日◇JFE瀬戸内海ゴルフ倶楽部(岡山県)◇7349ヤード・パー72>

陽気なフィリピン人が、表彰式でも会場を笑顔にした。マイクを握れば、喜びのコメントよりも「サンキュー」を伝えた数のほうがはるかに多い。「まだ続くの!?」と笑いが漏れるほどに各方面に伝えた感謝の数々。それは、日本ツアー初優勝までの長い道のりを物語る。

2011年のアジアンツアーで賞金王に輝いたジュビック・パグンサンが、日本ツアーに本格参戦したのはその翌年。シードから漏れることはなかったが、優勝の機会には恵まれなかった。本格参戦9年目、43歳で再びチャンスが訪れた。

「ミズノオープン」2日目で単独トップに立ち予選を通過すると、話題を呼んだのはアイアンを数本抜いた、クラブ11本のバッグの中身。「歳はとっていくばかりだから、少しでも楽にプレーしたくて」とおおらかに笑ったが、「このコースでは低い弾道が重要だから、そのなかで距離を出すことが大事。イメージを作って、初日からこれでいこうと決めていた」と、緻密な計算で選んだ11本、さらにはセルフプレーを選択し乗り込んでいた。

セルフプレーの場合は電動カートも使えるが、「自分で担いだほうが、移動がラク」と効率重視のたくましい43歳。最終日は出だし3ホールで2ボギーと気持ちが折れかけたが、「残り15ホールもある。集中すればチャンスはまだある」。そう自分自身に言い聞かせ、ひとりごとをつぶやきながらバッグを担いで小走りでプレー。その直後に転機はやってきた。

4番パー4でパーオンに失敗するもパーセーブ。6番でようやく最初のバーディが来ると、「これがターニングポイントだった」と、人が変わったようにここから6バーディの猛チャージ。後続を引き離していき、上がってみれば3打差をつけての圧勝だった。

「本当に、本当にうれしい。これまで2位が7回、やっとそこから解放された」と、優勝カップを掲げてまた「サンキュー!」。これで自身3度目の「全英オープン」出場も決め、「まずはビザをとらないと!」とビッグチャンスに笑顔を見せた。

おそらく11本でのツアー優勝は史上初。またこのスタイルで戦うかと聞かれれば「たぶんね。老いていく一方だから、できるだけ軽くしないと」と笑う。「全英は大きなイベントだし、全力を尽くしてチャンスをつかみたい」と型破りなベテランが、メジャーの舞台でも魅せてくれるかもしれない。