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コースを熟知する男たちが見たロイヤルポートラッシュ
未知なるコースを選手はどう攻めるのか?

1951年以来、68年ぶりに全英オープンのラインナップに戻ってきたロイヤルポートラッシュGC。それだけに、この美しきコースは多くの出場選手にとっては未知数のコースである。

もちろん、北アイルランド選手出身にとっては慣れ親しんだ場所だ。ロリー・マキロイはジュニア時代にコース記録の61をたたき出し、グレーム・マクダウェルはこの地で生まれ育った。ダレン・クラークもポートラッシュで暮らしている。ほかにも、アイルランド・オープンが同コースで開催された際には、プレーした経験のある選手もいる。

それでも、7344ヤードのこのコースは全選手にとって新たな試練を与えることは間違いない。近年改修されたため当時のそれとは異なるのは確かだが、前回1951年に同大会が行われた際、タイムズ紙のゴルフ記者であるバーナード・ダーウィン氏はロイヤルポートラッシュの完成度の高さに感銘し、こうつづっている。

「このコースは本当に素晴らしい。ハリー・コルト氏はモダンなコース設計をしながらも、例えば“黄銅”などよりもさらにタフで厳しいコースを作った。巨匠のコルト氏が設計したなかでも、特に象徴的なコースといえる」

初めてプレーする選手はどんな気持ちになるのか? この珠玉のコースを熟知するマクダウェルは、最初にプレーしたときのことを「夢見心地だった」と振り返る。

「最初に私がプレーした際は、ある夏の夜、当時13歳だった。ジュニアの場合はハンディ15以下でないとプレーできないコースだから、その夜に兄弟と一緒に忍び込んだんだ。私たちにとってロイヤルポートラッシュはとても神聖な場所で、そのようなところでプレーできて夢のようだった」

そして、当時と比べて7、8番ホールが新しくなり、18ホールすべてに改修が施されたが、ハリー・コルトのコース設計の哲学はそのまま残されている。つまり、大会で使用されるダンルース・リンクスは「伝統的だがモダンなつくり」である

以下は2016年のマスターズ王者、ダニー・ウィレットの言葉だ。

「 “古き良き”コース。ホール間が狭く、スペースがあるところは傾斜の激しい丘がある。多くのギャラリーが詰め寄せるコースでもある。ここで開催されたアイルランド・オープンでプレーした際もそうだった。ロイヤルポートラッシュで全英オープンが開催されるのは最高のことだと思う」

パー71のこのコースには、パー3が3番、6番、13番、16番の4ホールあり、パー5は2番、7番、12番の3ホールとなる。バンカーは全英オープンで使われるコースとしては非常に少なく、合計59カ所。それでも、改修前に比べて10カ所増えている。

2005年、当時16歳で61の最少ストロークを出したマキロイは、「ロイヤルポートラッシュでは『硬すぎて速くなりすぎる』ことはない」と断言する。

「例えば、(同じく北アイルランドの有名コースである)ロイヤルカウンティダウンの地面がとても固くなったときでも、ポートラッシュはいつも緑が豊富で素晴らしい景観はそのまま。信じられないほどの美しさを誇るゴルフ場で、包容力のあるタフなコースといえる」

前述のとおり、7、8番ホールが新しく作られたわけだが、これにより以前の17番と18番は大幅にカットされた。代わりに、1951年大会で選手たちが苦しんだ14番から16番の3ホールが今大会では上がりの3ホールを担っている。

16番の通称「Calamity(カラミティ―)」は236ヤードのパー3。日本語に訳すと「惨劇」と呼ばれるこのホールでは、多くの選手が苦戦を強いられるはずだ。

「その名前どおりです。少し打ち上げ気味となるティショットを、ワンオンさせなければいけません。もしグリーン前に落ちると、転がって大きく戻ってきてしまいます。景観は素晴らしいですが、強風の場合にはショットだけでなくパッティングさえも困難になるホールです」(ロイヤルポートラッシュGCのヘッドプロ、ガリー・マクニール氏)

17番はハイリスクハイリターンの「Purgatory(パーゲトリー=煉獄)。408ヤードのパー4はグリーンまで下り坂のために、ワンオンも狙える。しかしながらフェアウェーが狭く、左側には新しくバンカーが配されているため、危険も伴うホールとなる。

「安全にいって2打目をレイアップするか、それとも強気に攻めるのか。勝負を左右する可能性もあるホールです。このホールの行方次第で、スコアに2打の違いが出ることもあります。優勝争いをしている選手は積極果敢なゴルフをしたい場面かもしれません」(前出のマクニール氏)

また、アイルランド人特有の熱狂的なサポートが今大会をさらに熱くするはずだと、過去の王者たちも太鼓判を押す。

クラレットジャグを2度にわたり掲げている、アイルランド共和国出身のパドレイグ・ハリントンは、「全英オープンがポートラッシュに戻ってきた事実は特大のことだ」という。

「コースは最高で、ポートラッシュはこの“祭り”に非常に適した街だ。北アイルランドのみならず、アイルランド(共和国)にとっても素晴らしいこと。全英オープンのようなスポーツイベントを開催できるのは、アイルランドが発展した証(あか)しでもある」

昨年王者のフランチェスコ・モリナリもハリントンに同意する。

「2012年のアイルランド・オープンでプレーしたことがありますが、予選2日間は前年に全英オープンで優勝したダレン(クラーク)とのペアリングでした。そのときの雰囲気は、何とも表現しがたい独特のものでしたね。今大会も世界のトップクラスのイベントになるはずです」

大会ではいったいどのようなドラマが展開され、最終日にこの “未知”のコースを制してクラレットジャグを掲げているのは誰なのか?