<全英オープン 最終日◇17日◇セント・アンドリュース オールドコース(スコットランド)◇7313ヤード・パー72>
キャメロン・ヤング(米国)のメジャー初制覇ならなかった。しかし最終18番ホールで奪った執念のイーグルは、ゴルフの聖地セント・アンドリュースのギャラリースタンドから、ヤング、キャメロン・スミス(オーストラリア)、そしてローリー・マキロイ(北アイルランド)が繰り広げる白熱の戦いを見守っていた、通のゴルフファンを熱狂の渦へ巻きこんだ。
18番のティグラウンドに立ったヤングの頭の中には、答えは一つしかなかった。その時点でヤングのスコアはトータル17アンダー。同組で、終盤にきて19アンダーで単独トップに立ったスミスと2打差の3位につけていた。
「自分に少しでも優勝のチャンスを与えるために、勝負を仕掛けるつもりだった。下駄をはくまで勝負は分からないからね」
狙いはイーグル。ドライバーを一閃したヤングの一打は、356ヤードのパー4のグリーンへ向かっていった。ピン左約5メートルの位置につけるロングドライブを繰り出したのである。
そしてその微妙なパットもしっかりと沈めて、一縷の望みをつないだ。とはいえ、ヤングは分かっていた。「キャメロンのゴルフが素晴らしく、ホールのセットアップから考えても、イーグルを取ったとしても厳しくなると思っていた」と、ヤングはあの場面での心境を明かした。
その言葉どおり、スミスはこのホールでもバーディをゲットして、トータル20アンダーで戴冠に届かせた。
一方のヤングは、惜しくも1打差の単独2位で初めての全英オープンを終えた。だがこの25歳は、今季好調を維持しているとはいえPGAツアー参戦1年目のルーキーである。現時点ではレギュラーツアーの勝利はゼロだが、5月の全米プロゴルフ選手権では上位に顔を出し、最終的に3位タイでフィニッシュしている。
そして今大会では初日にトップに立ち、終わってみれば優勝まであと一歩の位置まで上り詰めていた。大会が始まる前はいわばノーマークの選手だった男が、メジャー2戦連続で優勝争いに顔を出し、今後は優勝候補にも名の挙がる存在になったのだ。
大きなステップアップを遂げた大会を振り返り、ヤングは「最善を尽くした。もう少し足りなかったのにはフラストレーションを感じているが、総合的には良い一週間を送れた。今日も、よく我慢して頑張れたと思う」と自分を褒めた。
プレーイングパートナーとして、最も間近の“特等席”でスミスのプレーを見ることもできた。「横で見ていたわけだけど、素晴らしいゴルフだった。キャメロンは世界のトップランカーで、それを証明したわけだ」と舌を巻いた。
今大会では白旗を挙げたが、自身のキャリアはスタートしたばかりである。
「現時点ではほかの選手と比べて僕はまだプレッシャーのかかる局面での経験は少ないわけだけど、うまく対応できたと思う」
そして次のように続けた。
「以前に『米ツアーの大会ならバックナインで5アンダーを打てれば勝利につながると思う』という話をしたと思うけど、今日の僕は5アンダーを打てた。しかしそれでは足りなかった。だから次は、最終日に6アンダーを打てばいいんだ。そうすれば勝てるはずだ」
その表情には、「次は自分の番だ」という強い決意が表れていた。
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