全英OPに挑むサムライたち 日本男子ツアー賞金ランキングトップ3を含む5人が出場
<全英オープン 事前情報◇13日◇ロイヤル・セントジョージズ(イングランド)◇7189ヤード・パー70>
今週の現地時間15日(木)、今年最後のメジャートーナメント「全英オープン」が開幕する。今年の舞台となるイングランドのロイヤル・セントジョージズGCに挑む日本人選手は5人。残念ながら松山英樹と今平周吾は欠場となったが、今シーズンの国内男子ツアーで複数回優勝を挙げている賞金ランクトップ3の星野陸也、木下稜介、金谷拓実らが出場する。
1年の中に四季があるといわれるほど、めまぐるしく変わる天候。そしてなんといっても全英名物のリンクスの海風がプレーヤーたちを苦しめる。前回、このコースで全英オープンが行われたのは2011年。トータル5アンダーでダレン・クラーク(北アイルランド)が優勝している。アンダーパーで終えたのはクラークを含めて4人だけと厳しい戦いとなった。
■星野陸也は今年の全米OPでメジャー初の予選突破
国内男子ツアーで賞金ランクトップを走る25歳の星野は、「全米プロゴルフ選手権」、「全米オープン」に続いて今年3度目のメジャーに挑む。全英オープンには初出場。2020年と2021年が統合された今シーズンは12試合に出場して3勝を挙げている。5月に行われた「アジアパシフィックダイヤモンドカップ」優勝で世界最古のメジャーへの切符をつかみ取った。
星野の魅力は平均300ヤードを超えるドライバーの飛距離。細身ながら186センチの長身からビッグドライブを放つ。風が強いなかでの低い球もお手のもの。さらに飛ばすだけでなく小技も得意。今年の全米オープンでは自身メジャー出場3戦目で初めて予選を突破し決勝ラウンドに進出。松山英樹と並ぶ26位タイで大会を終えた。将来は米国男子ツアー参戦を目指しているだけに、少しでも上位に食いこみ、世界ランキングを上げたいところだ。大会後には東京五輪も控えている。
■木下稜介は国内ツアーで今年もっとも飛躍&活躍した男
現在、賞金ランキング2位の木下は、今回の全英オープンがメジャー初出場。昨年1月に行われた「SMBCシンガポールオープン」の上位の資格で全英オープンの出場権を手にしたが、昨年大会はコロナで中止。待ちに待った1年越しのメジャー出場となる。
木下は松山英樹や石川遼と同じ学年の29歳。これまで何度も優勝争いに絡むも初優勝は遠かった。今年6月の国内メジャー、「日本ゴルフツアー選手権 森ビルカップ Shishido Hills」で涙の初優勝を挙げると、次戦の「ダンロップ・スリクソン福島オープン」で早くも2勝目。初優勝からの2連勝は日本人では初めての快挙だった。今年だけで考えれば、国内でもっとも飛躍し、活躍した選手と言っていいだろう。
そんな木下の武器はショット力。稲見萌寧のコーチでもある奥嶋誠昭氏に、昨年末から本格的に指導を受け始め、ショットの精度の指標となる『パーオン率』が飛躍的に向上した。19年シーズンは65.11%で40位だったが、今年は71.40%で現在3位につけている。ドローヒッターの木下は、全英オープン出場が決まってから、ドライバーでの低いフェードを練習してきた。約1年半が過ぎて、それはすでに木下の武器となっている。ショットの上手さはツアー屈指。勝利を経験したことで、課題のパッティングにも自信がついてきた。
「欧州ツアーのQTに出てみたい」という木下は、大会2日目の16日に30歳の誕生日を迎える。「練習ラウンドをお願いする予定」と言っていた松山はいないが、29歳最後の日と、30歳最初の日に良いプレーをして、海外参戦への足がかりを築きたい。
■金谷拓実は5月から世界を転戦し全英オープンへ
ツアールーキーながら、賞金ランキング3位の活躍を見せている金谷。アマチュアとして出場した19年12月に行われた「エミレーツ・オーストラリア・オープン」で3位タイに入り、全英出場を決めた。木下と同様に20年大会が中止となり今年にスライド。今大会は19年以来2年ぶり2度目の出場となる。19年大会はカットラインに1ストローク届かずに予選落ちした。
金谷は昨年10月にプロ転向すると、翌11月の「ダンロップフェニックス」でプロ初勝利を挙げ、今年初戦の「東建ホームメイトカップ」でも優勝。一気に世界ランキングを上げた。今年5月の全米プロに出場するために渡米すると、大会後も米国に残り、「ザ・メモリアルトーナメント」に推薦で出場した。
米国での2戦は予選落ちに終わったが、今度はヨーロッパに渡り、欧州ツアーに参戦。ドイツで行われた「BMWインターナショナル・オープン」では17位タイ、翌週の「ドバイデューティーフリー アイルランドオープン」では28位タイと結果を残した。全米プロ出場後は1度も帰国することなく全英オープンを迎える。金谷は今年、欧州ツアーのアフィリエイトメンバーに登録し、同ツアーのシード権を目指しているだけに、1つでも上の順位に入ってポイントを稼ぎたいところだ。
■日本一曲げない稲森佑貴と、飛ばし屋の永野竜太郎にも注目
稲森佑貴は19年大会に続いて、2大会連続の出場。どちらも前年の「日本オープン」優勝で出場権を獲得した。19年大会は予選を通過して4日間戦い抜いたものの、強い海風に苦しみ、決勝ラウンド進出した選手のなかで最下位(72位タイ)に終わった。今季の国内男子ツアーでのフェアウェイキープ率は驚異の78.18%を記録している日本一曲がらない男は、一昨年の悔しさを晴らすため静かに燃えている。
稲森のドライバーが曲がらないポイントの1つに、ずっと続けているアドレスに入るルーティンがある。一度パッティングと同じ逆オーバーラッピングで握ってから、インターロッキングに握り直しているのだ。本人は「逆オーバーラッピングで握ることで、右手のスクエア感が強まる。それに、パターのように体の真ん中にクラブを置くと、スクエアに構えやすくなる」と話している。強風のなかでもいつも通りフェアウェイに置ければ、稲森のパターンにもっていけるだろう。
最後は5月の「〜全英への道〜ミズノオープン」で2位に入り、今大会の出場権を獲得した永野竜太郎。5人のなかでは唯一の30代で、国内男子ツアーではまだ優勝経験がない。300ヤードを超えるドライバーの飛距離が武器の永野は、熊本県出身ながら高校は茨城県の名門・水城高校、大学は東北福祉大とゴルフのエリートコースを歩んできた。
メジャー初出場となる永野にセッティングを含めた全英対策を聞くと、「みんなの話を聞いてもその人のフィーリングだからわからないし。自分のフィーリングで感じてその場で対応します。行き当たりばったり作戦」と笑って答える。この明るく楽観的な性格がメジャーの舞台でどう転ぶかにも注目したい。
先週は国内男子ツアーの試合がなく空き週だったこともあり、5人のサムライたちは前週から会場入りして、練習ラウンドを行っている。東京五輪を前にイングランドから明るいニュースを届けてもらいたい。