<全英オープン 2日目◇20日◇カーヌスティGL(7402ヤード・パー71)>
大会2日目の朝。寝室の部屋のカーテンを開けたザック・ジョンソン(米国)が空から舞い落ちる雨を見て小躍りをすることはなかったと思うが、一方でガッカリするようなこともなかったはずだ。
2015年に聖地セント・アンドリュースで「チャンピオン・ゴルファー・オブ・ザ・イヤー」に輝いてから3年。汗ばむほどの陽気だった初日とは真逆の大雨と寒さと戦ったジョンソンは、見事に「67」の好スコアをたたき出し、自身2度目の優勝に一歩近づいた。
平均飛距離290.3ヤードは、米国男子ツアーでは146位に位置することからも分かるとおり、ジョンソンはロングヒッターではない。だが逆に、マネジメントが肝要となる戦術的なリンクスコースは、42歳が得意とするスタイルといえる。
その証拠に彼は世界最古のメジャーで11年連続予選通過、さらに、そのうち7度は25位以内でフィニッシュしているのである。
この日4アンダー、トータル6アンダーで首位タイに立ったジョンソンが打った中で最も悪かったショットは、1番ホールの1打目だった。しかしそれ以外のショットとパット、つまり「66」打の中にはミスショットが存在しなかった。1番でいきなりボギーをたたいたが、その後の5ホールで3つのバーディを奪い、バックナインではさらに2つ追加。その中には、2日目首位を決めた18番のナイスパットも含まれた。
ジョンソンが全英向きの選手。それは周知の事実だが、もちろん本人も「私のゴルフは全英オープンに適している」と認識している。
試合後の会見では「『雨風の中でプレーするのが大好きだ』と決していうわけがない。好きなわけがないからね」といたずらっぽく笑った。
「だけど、この環境でいいプレーができることを知っている。どんなコンディションであろうが、コースに出て最善を尽くすだけだ」
メジャー2勝と経験豊富で、スタイルがリンクス向きとなれば、当然識者は“ジョンソン有利の構図ができた”と考える。しかし本人の中では「まだ2日終了しただけ」である。
「まだまだ仕事は終わっていない。過去もそうだし、ここまでの2日間を見て、やるべきことがあると分かっている。全英オープンこそ、私の長所と短所を一番引き出す大会だからだ」
「だからどのようにプレーすべきかが分かって以来、リンクスゴルフが好きになった。ゴルフの聖地であることもそうだし、1860年から続くこの選手権の伝統もそう。すべてにおいて敬意を持ち、愛情も注いでいる」
謙虚に、そして落ち着いて、模範解答を並べるベテランの目の先には、すでにクラレット・ジャグを掲げる“リンクスの申し子”のような自身の姿が見えているように聞こえる。