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“成長した”元王者の復活間近 タイガー・ウッズが優勝姿を一番見せたい相手
最近のウッズはガッツポーズを見せる機会も多くなった|(撮影:GettyImages)

<全英オープン 最終日◇22日◇カーヌスティGL(7,402ヤード・パー71)>

男子ゴルフ界ではタイガーウッズ、女子テニス界ではセリーナ・ウィリアムズ(ともに米国)。以前の2人は、互いのスポーツで王者として君臨。自身の前に出現した敵をなぎ倒し、トロフィーを勝ち取り続けていた。だがケガなどもあり、ともにコースとコートから離れる時間が長くなり、絶対的な王者ではなくなっている。


しかし珍しく暑い日が続く今年の英国の夏。親友でもあるこの2人は、トップレベルのアスリートであることを再び証明した。ウッズは「全英オープン」で、かつての強さの片りんを見せつけた。それは、カーヌスティの地を訪れたギャラリーを興奮させ、そして再び頂点に返り咲く日が訪れることを期待させた。

最終日。ウッズは勝負どころで踏ん張り切れなかった。最終的にチャンピオン・ゴルファー・オブ・ザ・イヤーの栄冠を手にする、同組のフランチェスコ・モリナリ(イタリア)に3打差をつけられ、6位タイで終戦した。新王者がバックナインでラストスパートを仕掛けたのとは逆に、ウッズは前半放っていた特大の輝きを急激になくしていった。

とはいえ、14日にウィンブルドン選手権決勝戦で敗れたウィリアムズ同様、ウッズもまた見ている者を熱くさせた。過去3年間苦しんできたケガから、過去チャンピオン・ゴルファー・オブ・ザ・イヤーに3度輝いている“元王者”の完全復活が近いことを予期させた。

それだけに、ウッズ自身も優勝の機会を逃したことを残念に思う一方で、極端に落ち込むことはないはずだ。

「おそらくこのあと、親友のセリーナから電話をもらうだろう。そして今日起こったことについて話しあうはずだ。私たちは、互いに似たような経験をして、ものの見方も変わった。出産を経て出場したウィンブルドンファイナルで、セリーナは負けた。だけど彼女は、わたしと同じで、広い視野でものを見なくてはならないような経験をしてきたんだ」

最近のウッズは「Perspective」という単語を頻繁に使う。つまり「ものの見方」だが、過去数年の間に様々な事柄を経験したウッズは、精神面での成長を感じているのである。

「優勝できなかったことは、苦い経験としてしばらく心に残る。でも、ここに戻る前の状況を考えれば、今の私はとても恵まれている」

この日のゴルフを観戦した人たちも、とても恵まれていた。このコースでプレーされたゴルフは、満員のライブ会場よろしく、しびれるような雰囲気の中で進行したからだ。

そしてそのショーの中心にいたのが、ウッズだった。6番でバーディを奪った際の特大の歓声は、車で30分離れているダンディーの街にもこだましたのではなかろうか。さらにその後、ウッズが単独首位に立った時には、ボルテージは最高潮に達した。

首位と4打差でスタートしたウッズは、強風にてこずるライバルたちをしり目に、以前の強さを取り戻し、素晴らしいパフォーマンスで「復活」をアピールした。傷の癒えた虎が、クラレット・ジャグを奪い取ると確信したゴルフファンもいたはずだ。ウッズ自身も、トラブルが続いた8〜10番を切り抜けたときに、勝利が近づいていると信じていた。

「10番では1打目をミスしたけど、ここを切り抜ければ勝利できるはずだと思っていた。クリーク越えのナイスショットをするか、自分の足もとに止まるか。結果的に成功した」

だが、長い間勝利から見放されているために、この虎が持つ特別な「勝利への嗅覚」は薄れていたようだった。11番で痛恨のダブルボギーを叩き、傷心したウッズは続く12番でもボギー。この時点で、天才ゴルファーの手から勝利がすり抜けていったのだった。

それでも、だ。ここまでやれたことさえも、今のウッズにしてみれば十分である。その証拠に、ウッズは子どもたちにこう伝えたという。

「パパは頑張ったよ。だからキミたちが、パパのことを誇りに感じてくれることを願っている、とね。子どもがハグしてくれた時には、熱い気持ちが込み上げてきた。彼らも、私にとってこの大会がどのような意味を持つか、そしてトップレベルで再びゴルフをできる喜びを、わかってくれているんだ」

そしてこう続けた。「これは私にとってとても特別な意味を持つことだ。これまで多くの優勝をしてきたけど、そのどれもが彼らが生まれる前のもの。だから、子どもたちはパパが優勝する姿を見たことがないからね」

子どもたちのことを考える親は強いものだ。世界最古のメジャーではチャンスを逃したウッズだが、15回目のメジャーチャンプになる日も、もう目の前まで迫っているのかもしれない。